福井県観光DX実証事業

Case Study

福井県観光DX実証事業
mitsumonoAIの「現場定着モデル」

観光DX 福井県 実証事業 公開:2026年5月

成果の主因は「設計された生成AI」。定着の鍵は「運用設計」。

「正直、どうすればいいか分からなかった」──これは、福井県観光DX実証事業でmitsumonoAIを導入した、ある第三セクター企業の担当者の言葉です。私たちbasicmathは、2025年9月から2026年1月にかけて、福井県観光DXコンソーシアムの一員として、観光庁の令和7年度「観光DX推進による地域活性化モデル実証事業」に採択された取り組みの一環として、生成AIスイート「mitsumonoAI」を提供する実証事業を実施しました。

なぜ福井の観光現場に生成AIが必要だったのか

福井県観光DXコンソーシアムが推進する取り組みは、観光庁関連事業に4年連続で採択されています。2024年11月に開催されたG7観光大臣会合の成果文書「AIと観光」では、福井県の観光DXが先進事例として掲載されました。

福井県では、独自のDMP「FTAS」へ宿泊予約状況や観光客アンケートなど価値の高いデータを蓄積してきました。しかし、専門知識の不足、専任担当者の不在、分析結果と実務の断絶といった課題から、多くの現場事業者にとってデータは十分に活用されていませんでした。

事業者が直面していた「3つの壁」

現場定着を阻む3つの壁

壁① 時間とリソースの壁

画像制作、口コミ返信、マニュアル要約など、人手と時間を要する定型業務。鉄道事業者ではサムネイル作成に1週間、宿泊事業者では口コミ返信に1件あたり10〜15分を要していました。

壁② 0→1アイデアの壁

新メニュー開発、企画立案、PRイベントの検討──最初の一歩を踏み出すためのアイデアが枯渇し、業務が停滞。

ゼロから企画を考えると時間がかかり、視点も偏りがちだった

壁③ 客観性の壁

自分の考えが正しいか不安になる、客観的な意見が欲しい、議論を深める相談相手がいない──意思決定における孤立。

自分の意見を伝えても『それは個人の感想だ』と議論が進まなくなることがある

mitsumonoAIの設計思想

mitsumonoAIの開発にあたり最も重視したのは、「AI初心者でも、専門用語を知らなくても、すぐに使える」ことでした。「モデル」や「プロンプト」といった専門用語を一切使わず、「目的」に応じたエージェントとワークフローを用意し、入力項目を埋めるだけで高品質な出力を得られる仕組みを構築しました。

OpenAI、Claude、Gemini、Grok、Perplexityといった最新の複数モデルを活用し、35種類以上のAIエージェントやワークフローを搭載。コンテンツ作成、企画・アイデア出し、分析・リサーチ、資料・マニュアル作成の4カテゴリーで幅広い業務を支援します。

観光DX推進アドバイザー「Sensei AI 佐竹正範」

本実証事業で特に注目を集めたのが、福井県観光連盟の観光地域づくりマネージャー・佐竹正範氏の知見を組み込んだ「Sensei AI 佐竹正範」です。専門家の相談体験を「プロダクトの機能」として組み込み、時間や場所に制約されず、いつでも相談・壁打ちができる環境を実現しました。

設計で最もこだわったのは、佐竹氏本人の空気感や価値観、人となりが伝わる回答を生成すること。画一的な正論ではなく、ユーザーの課題に寄り添い、気づきやひらめきを与える存在を目指しました。

Sensei AI 佐竹正範

導入初期の課題──AIを「自分ごと」にするために

実証事業の目的は、AIを日々の業務に活かせる「パートナー」とすること。しかし導入直後、多くの事業者が3つの壁に直面しました。

① 接続の壁──AIと自分の業務が、どう繋がるのか分からない

機能が非常に多いため、自分の業務課題に対してどのAI機能を使えばよいのか判断に迷うことがあった

② 対話の壁──AIに意図がうまく伝わらない

AIに修正を指示すると、意図しない部分まで変わってしまうのはなぜか教えてほしい

③ 活用の壁──AIの回答を、どう次のアクションに繋げるか分からない

エージェント機能で生成結果は出るが、その結果をどう活用して業務を進めれば良いのかが不明

現場で解放するための運用設計

伴走型運用設計

「システムを提供するだけでは、定着しない」──登録ユーザー数100名以上という目標を大きく上回った一方で、継続利用者は限られていました。そこで操作説明に留まらない支援設計として、段階別の学習機会、個別伴走、継続支援を組み合わせました。

施策① 段階的なセミナープログラム
初級・中級・上級の使い方セミナーを追加企画し、合計41回のセミナーを開催。参加者のスキルレベルに応じた段階的な学習機会を提供しました。

施策② 個別レクチャーの実施
ヒアリング対象の13社に対し、業種ごとに完全カスタマイズの個別対応を実施。宿泊事業者には口コミ対応、鉄道事業者には画像生成とSNS投稿の連携活用など、それぞれの業務に最適化した支援を行いました。

個別セミナーでは実務に直結した情報を得られて有益だった

施策③ 電話ヒアリングによる伴走
ツールの使い方だけでなく、潜在的な課題や日々の悩みを丁寧に聞き取り、AIを活用してどう解決できるかを一緒に考える「伴走」型の支援を重視しました。

施策④ 有人チャットによる即時サポート
困ったときにすぐ相談できるチャット形式のサポート機能を実装し、立ち止まらない環境を整えました。

施策⑤ 継続的なコミュニケーション
メールマガジン配信、ブログ記事の発信、セミナー資料の共有など、事業者が自走するための学習環境を整備しました。

施策⑥ ユーザーフィードバックに基づく継続的改善
事前質問の追加、UI/UXの簡素化、新規エージェントの追加など、現場の声を製品に反映。「自分たちの意見が製品に反映されている」という実感が継続利用を後押ししました。

導入効果──数字で見る劇的な業務改善

導入効果サマリー

Time Reduction

サムネイル画像作成 1週間

30分

画像編集スキルがゼロだった鉄道事業者の担当者が、mitsumonoAIの画像生成機能により高品質な画像を即座に生成。時間削減率は99%以上

ざっくり10万円ぐらいの価値がある感覚

Time Reduction

口コミ返信 10〜15分 / 件

半分〜1/3に短縮

返信の叩き台を数秒で生成し、修正するだけで大幅な時間短縮。さらに厳しい意見への返信の心理的負担が軽減され、前向きな改善活動に繋がりました。

Time Reduction

PRシナリオ作成 半日

1時間

月間約10時間の業務創出、月額2万円相当のコスト削減効果に相当します。

Time Reduction

法務関連リサーチ 丸1日以上

約1時間

「どこに聞いたらいいか分からない」という状態から、約1時間で要点が整理可能に。顧問弁護士とのやり取り回数も削減されました。

数字では測れない変化──利用者のマインドセット

この実証事業で最も印象的だったのは、単なる作業時間短縮ではなく、高付加価値業務の進め方そのものが変わったという点です。

視野が広がり、課題の根源が別のところにあることに気づくなど、多角的な視点が得られるようになった

AIからの客観的な指摘で、自分の意見に自信が持てるようになった

AIは個人のスキルに依存しない部分があるため、業務の属人化を防ぎ、組織全体のスキル向上に繋がるという気づきがあった

AIは相談相手や「良いパートナー」のような存在になっています

Mindset Shift

「個人の活用」から
「部署・組織としての活用」へ

生成AI時代の「おもてなし」とは

私たちは、「AIは『おもてなし』を代替するのではなく、人が『本来のおもてなし』に集中するための時間を創出するツールである」と考えています。

口コミ返信や資料作成に費やされていた時間を生成AIが効率化し、そこで生まれた時間を、お客様一人ひとりと向き合う接客や、より魅力的な観光体験の創造──人でなければできない本質的な業務に再投資する。それが、人手不足や高齢化という構造的課題に対する最も現実的で効果的なアプローチです。

福井モデルから学ぶ、生成AI導入3つのステップ

福井モデル 3つのステップ

Step 1 目的の明確化

「何のためにAIを使うのか」という具体的で測定可能なゴールを、経営層が主導して設定すること。漠然とした期待だけでは現場は混乱し、AIは使われないままになります。

Step 2 信頼できる伴走者と学びの場の確保

全体セミナーで基礎知識を学び、個別対応で個々の課題を解決する段階的な支援体制。いつでも相談でき、具体的な解決策を一緒に考えてくれる伴走者の存在が、心理的なハードルを下げます。

Step 3 小さな成功体験の横展開

まずは特定の業務に絞ってAIを活用し、「これなら自分にもできる」という小さな成功体験を積む。その事例を組織全体で共有し、AI活用を個人のスキルから組織文化へと昇華させます。

現場の声が、未来を創る

実証に参加いただいた事業者の皆様からいただいた率直なフィードバック、具体的な改善提案、そして新しい技術に挑戦する勇気──これらすべてが、mitsumonoAIの進化の原動力です。

Key Takeaway

生成AIは、
一部の先進企業のためのものではない。
設計と運用が揃えば、
どの業種でも、現場に定着する。

mitsumonoAIは、現場に定着するAI活用を一緒に作るパートナーでありたいと考えています。

AIに任せること。人が価値を出すこと。
その境界を見極めるほど、サービスの品質は上がる。
福井の実証が示したのは、その現実でした。

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